学校法人水野学園 東京サイクルデザイン専門学校

10周年記念インタビュー


日本初の自転車専門学校として、2012年に開校した東京サイクルデザイン専門学校(TCD)。設立10周年を記念し、学校設立のキーパーソンや、業界で活躍する卒業生にインタビューを行う本企画。今回は、お隣韓国から来日してTCDに入学し、現在は韓国のソウルで自分の城をオープンさせた卒業生2人にインタビューを行った。

Interview

フレームビルディング工房「MIMOSA CYCLING」代表

パク キョンリュンさん

PARK GYUNGRYUN

2016年 自転車クリエーションコース卒業

プロフィール韓国で美術大学卒業後、来日してTCDに入学。卒業後は自転車プロショップ「高村製作所」で6年間フレームビルダーとしての経験を積む。昨年韓国に帰国し、今年初めには念願だった自身のフレームビルディング工房「MIMOSA CYCLING」をソウルの聖水(ソンス)にオープンさせた。
「mimosa cycling」Instagram

TCDに入学しようと思ったきっかけを聞かせてください。

TCDに入学しようと思ったのは、私が24歳くらいの頃だったと思います。それまでは美術大学で絵の勉強をしていて、卒業を間近に控えた頃、進路にとても悩んでいました。海外に留学して絵の勉強を続けるか、それとも就職して仕事をするか。いろいろと考えて、卒業後は韓国で自転車の輸入会社に一度就職することにしました。

ちょうどその頃、系列校のヒコ・みづのジュエリーカレッジに通っていた友人が、「TCDという自転車の専門学校が開校されるらしい」と教えてくれたんです。元々僕は自転車に乗ることが大好きだったのですが、韓国には自転車を専門的に学べる学校はない。日本に行って学びたいという思いが日に日に強くなり、思いきって会社を辞め、入学することに決めました。
異なる国で、自分が好きなことを専門的に学べるなんて本当に貴重なこと。どんなことが学べるのか、どんな生活になるのか、期待でワクワクしていました。

学生時代、フレームビルダーが作品を発表する「ハンドメイドバイシクルショー」にTCD代表として出展。卒業制作では作者兄夫婦の結婚祝いで呼吸を合わせて漕がないと進まない自転車を制作。

実際、TCDで授業を受けてみてどう感じましたか?

学校に入る前は、自己流で自分の自転車をいじっていて、それである程度できていたからちょっとできる気になっていたんです。でも、TCDで先生たちからしっかりと基礎を学ぶと、それが間違ったやり方だったと気づかされました。

自分の自転車をいじるのと、人の自転車をいじるは全然意味合いが違います。その作業の意味を理解して、正しいやり方で、確実にやらなければいけない。技術的なことはもちろんですが、そういう経験ができたことは私にとってとても意味のあることでした。

卒業後はフレームビルダーの道へと進んだそうですね。すんなりと働き先は決まりましたか?

TCDに入学する前からフレームビルダーになりたいという夢をもっていて、卒業後はビルダーさんの元で修行したいと思っていました。でも、ビルダーの仕事も限られているし、職人の仕事なので、誰でも簡単に受け入れてくれるわけがないと分かっていました。

それで、3年生になった頃にアルバイトでもいいから経験を積んでおきたくて、ビルダーさんに自分で連絡して、働かせてくれないかと直接訪ねてみることにしました。最初何箇所か行きましたが、当然簡単にいくわけもなく、全て断られてしまいました。それでも諦めず訪ねていると、プロショップタカムラ製作所のビルダー、高村さんが、今すぐに仕事はないけど、見学に来るのはいいよと言ってくれたんです。

それで3年生の頃、時間がある時に見学に行っていたら、ちょうど1人働いていた方が退職することになったらしく、アルバイトとして働かせてもらえることになりました。それで、卒業後もそのまま高村さんの元で働かせてもらうことになったんです。

職人の世界は厳しいと聞きますが、ビルダーの仕事は実際にやってみるとどうでしたか?

職場では、学校のように丁寧にやり方を教えてくれるわけではありません。基本的には、職人ならではの“仕事を盗む”ということが大事になってきます。求められるレベルもこれまでとは全然違いますし、シビアな環境です。高村さんは仕事に厳しい方なので、なかなか僕たちの仕事に合格点をくれない。それでも、よくできた時にはちゃんと認めてくれました。

6年間勤めましたが、長かったような、短かったような。もう充分かなと思っても、一人でやってみると未熟だなと感じる部分があったり。でも、一流のビルダーさんの元で修行することができ、ビルダーとして大きく成長できたことは言うまでもありません。

昨年、韓国に帰国してショップをオープンさせたと聞きました。どういう経緯だったのですか?

元々自分の工房を持ちたいという目標はあったのですが、コロナ禍もあり、なんとなく環境を変えるタイミングのような気がしたんです。ソウルにショップをオープンさせることに不安はありましたが、思いきってやってみようと思いました。

今はまだオープンして数ヶ月ですが、自分のブランド〈mimosa〉のフレームを製作しているほか、お客さんの自転車整備も受け付けています。まだまだオーダーが多いわけではありませんが、毎日楽しくやっていますよ。

今後の目標を教えてください

実は今、自分が作ったフレームを韓国競輪に納車できるよう準備しています。日本の競輪と同じように、韓国でも厳しく定められた基準をクリアし、認定を受けたフレームやパーツでないと納品することはできません。今は実際に選手にテストで乗ってもらったり、検査を受けているところ。まだ仕事にはなっていませんが、忙しい日々を過ごしています。

コロナが落ち着いたら、日韓のトップ選手同士で行われる、日韓対抗戦競輪も再開されると思います。その時に、僕が作ったフレーム〈mimosa〉に乗った選手が活躍してくれたら、どんなに素晴らしいか。とても夢があるし、想像するだけでも胸が熱くなります。お店を軌道にのせながら、韓国競輪にも早く納車できるよう日々努力を続けたいと思います。


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